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2000年にスタートした介護保険制度では介護報酬は3年おきに改定されることが決まっていて、03年、06年と改定されてきました。過去2回はマイナス改定で、今回初めて3.0%アップのプラス改定です。その背景には、介護現場での介護福祉士・ケアマネージャー・介護支援専門員の人手不足があります。介護が必要なお年寄りは増えるのに、介護現場での離職者は増え、介護福祉士・ケアマネージャー・介護支援専門員を求人募集しても人は集まりません。介護の現場で働いている人は人手が足りず、燃え尽きる寸前で働いています。こんな状況が全国どこでもあたり前になっています。今回はさすがに事態の深刻さを認識して、介護報酬をアップして、人材を確保しなければいけないと考えたわけです。介護労働者の処遇改善を目的にして、3%介護報酬を上げるのですから、「介護労働者の給与を一律3%上げる」。考え方としては、これがあたり前ですが、改定内容はそうなっていません。その中身は大変分かりにくいものです。介護報酬は、基本報酬と加算から構成されています。等しく介護報酬全体の底上げを図るというのであれば、基本報酬の改善を選択することになりますが、今回の改定では、多くの加算を創設し、一律の改善ではなく、加算等による傾斜配分をおこなっています。負担の大きな業務や有資格者を評価するという趣旨で加算すれば、経営者は介護福祉士の資格を取得させるために、労働者を研修にも行かせるだろうし、長く働くように引き留めるだろう、と考えているのです。つまり、加算によって、誘導しているのです。加算はオプションなので、加算をとらないと賃上げの原資を十分確保できません。加算なしで、十分な賃金引上げは困難です。ただし、加算ばかりになることで、事務作業が極めて煩雑になります。今までも、提出書類が多くて、それが、介護労働者が職場を辞めていく大きな理由でした。にもかかわらず、またもや書類が増えてしまうことになります。しかも、負担や専門性、キャリアを加算等によって「評価」するといっても、個々の労働者の賃金とは直接関係がありませんから、介護労働者の低賃金問題を解決することは全くできない仕組みとなっています。今回の3%アップの政策目的ははっきりしていて、介護労働者の処遇の改善です。それが実現されなければ、政策としては失敗です。それは厚労省が2007年7月に出した「福祉人材確保指針」や一連の社会保障審議会介護給付費分科会の審議報告で明らかです。処遇改善というあいまいな言葉になっていますが、基本は「賃金が上がること」にあることははっきりしています。しかし、今のままでは、介護報酬が3%上げられても、それがそのまま、介護労働者の賃金アップにつながらない危険性があります。経営者側は「経営者に対して、性善説に立って欲しい」として、「経営の自由を侵すような規制をかけないでくれ」といってきました。それに対して、労働側は「そういわれても、ガイドラインを作り、社会的な規制をかけるべきだ」と主張して、それが審議会で大きな攻防になりました。そうした中で、厚労省は12月3日の第61回分科会で「介護従事者の給与等処遇に関する情報の公表については、事業者や事業者団体が自主的、積極的に取り組むことが期待される。このことを前提としつつ、国や事業者団体が一定のガイドラインを作成すること等により取り組みを支援することが適当である」という審議報告(たたき台)を提出しました。ところが、それに対して、12月12日の第62回分科会で経営者側が猛反発して、ガイドラインという言葉をなくすだけでなく、「このことを前提としつつ」以下を削除、「なお、事業者団体が公表の手引きを作成するなどの取組を国が支援していくことも考えられる」と全面的に書き直させました。つまり、ガイドラインなど経営の自由を侵しそうな文言をすべて削除させたのです。「給与等は労使に委ねるべきもの」という原則を確認しただけであり、賃金改善に誘導する仕組みはほぼ皆無、という結論です。「給与等は労使に委ねるべきもの」という身もふたもない話。介護労働者の賃金引上げのための社会的な規制はありませんので、賃金アップを実現できるかどうかは、その事業所の労使関係にかかります。現場で、経営者側にきちんと賃金アップを認めさせることができる事業所は賃金が上がりますが、そうした力を持っていない場合には、アップを実現できない可能性があります。そのためにも、労働組合の存在が不可欠です。ただ単純に、自分の賃金が上がるというだけの話ではありません。介護は地域の住民が生活していく上で極めて重要であり、地域社会を維持していくライフラインの役割を果たしているわけです。にもかかわらず、それを担う介護労働者の働く環境があまりに劣悪で、職を離れる人が相次ぎ、このままでは担い手がいなくなり、ライフラインが崩壊する。今、そうした状況に直面しているわけです。そこで、まず仮に3%であっても賃金を上げて、働く条件をよくする。そして、辞める人を少なくすると共に、介護の仕事に就きやすくする。それは壊れかけたライフラインを修復し、安心して暮らせる地域社会を築いていく第一歩なのです。
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